くらしを考える会代表 山崎 たつえ 17年11月松本市が行った「松本・四賀直結道路市民意向確認四賀地区アンケート」結果では「直結道路8割が要望『合併の条件』理由に」(市民タイムス17.12.1)とのこと。 そこで「合併の条件か、否か」について考えてみた。 1.四賀住民と松本市長の異なる見解 @ 「四賀直結トンネルは合併の条件」とする四賀村民 ★中島前村長から「松本・四賀直結道路をつくる約束の書面を頂いた」とK氏 17.10.20すぎのある日、四賀直結トンネル設置に反対しているメンバーの1人「K氏」が「中島前村長にお目にかかり合併手続きに関わる書類の写を頂いてきた。そこには『松本・四賀結道路に取り組む』と書かれ、松本市長、四賀村長の印鑑、松本市議長、四賀村議長の印がしっかり押されている」と語った。メンバーのS氏はその話を聞き「Kさんのお手柄だ」と言った。私はそれを後日見せて頂いた。 中島前村長さんから頂いてきた書類は二冊の冊子の抜粋であり関連箇所が黄色く塗られていた(下の表のラインの部分)。そして、次のように書かれていた。
u\紙黄色く色を塗ってある箇所
1冊目「合併協定書」 松本市、四賀村106pに「24 新市建設計画 別添『松本市・四賀村新市建設計画』のとおりとする」 巻末に松本市長、四賀村長、松本市議会議長、四賀村議長のサインと印鑑 2冊目「松本市・四賀村新市建設計画」 松本市・四賀村合併協議会26pそのため、松本市街地と四賀地区とを直接結び、筑北地域や東信地域との連携の上でも重要な道路となる松本・四賀直結道路の建設に取り組みます。この直結道路は地区住民にも安全で安心できる生活を保障します。……」
K氏から二冊の「黄色に塗られた内容」(上の表のラインの部分)を見せられ、私の脳裏にラインの部分のみが強烈にインプットされた。そこだけ見せられたら誰もが「これは合併の条件だ」と思うのではないかと思う。
★ 合併の条件とする村人 それから1ケ月位たった17年11月20日、Mウイングで「四賀直結トンネル設置に賛成の意向もっている人たちの主催する会」があった。受付で「Kさんが中島前村長さんから頂いてきたと同様に黄色く塗られた書類」を頂いた。当日の講師として大きな垂れ幕に蛯名氏と中島前村長の名前が書かれていた。しかし、中島前村長はお見えにならず「中島前村長さんの代理として依頼された」として百瀬氏が受けつけで渡された資料を元に話された。上の表のライン部分の説明が強く私の印象に残っている。 A合併の条件ではないとする松本市長 ところで松本市長は「四賀直結トンネルは合併の条件ではない」と明言している。 読売新聞に次のように書かれていた。「松本市長は17.10.24日『直結道路の建設は旧四賀村との合併の条件ではない』と重ねて強調した。菅谷市長は昨年3月の市長就任以来、合併協議会や合併後に四賀地区で開いた『市長と語ろう会』などの場で『建設ありき』ではないと再三言って来たと説明。『後は旧四賀地区で村長が(村民に)どう説明したかだと思う』と話した。17.10.17日市民の意向確認のための四賀地区で開かれた住民意見交換会では『直結道路は合併条件だったはず。道路ができないのなら四賀村は合併しなかった』などの意見が多数を占めていた(読売新聞17.10.25)」と。 B 松本市長を中島前村長は訴えたらどうかと進める人々 反対を表明しているKRさんは17.11.20の会合に四賀地区から来られていた前中島村長さんの代理の方々に言った。「もし合併の条件だと言われるのでしたら、中島前村長さんは松本市長を訴えたらどうですか?」と。それについて百瀬氏は何も言わなかった。 又、私の知人で中島前村長さんに会われたK氏(17.10.11日)も前村長に「松本市が四賀直結トンネルをつくらないと決定したら菅谷松本市長を法的に訴えるおつもりですか」とお聞きすると「菅谷市長さんは(その人柄からいって約束をお守りになる方だから)必ずつくってくれると思っています(つまり現段階では訴えるつもりはない)」と言われたようだ。
U 新市建設計画とは ★ 松本市合併課に聞く ところで松本市長は「約束ではない」と言うし、四賀村民は「合併の条件」という。どちらが正しいか判らない。黄色に塗られた部分「松本市街地と四賀地区とを直接結び、筑北地域や東信地域との連携の上でも重要な道路となる松本・四賀直結道路の建設に取り組みます。この直結道路は地区住民にも安全で安心できる生活を保障します」のみを読めば、これは「合併条件だ」と誰でも思うだろう。 しかし、私はこの文の「前文はどうなっているのか」見たいと思った。まず松本市合併課に伺った。松本市合併課では『松本市・四賀村新市建設計画』などの全文をみせて下さった。そして、松本市発行の「まちづくりの計画」という小冊子(8p)を下さった。そこには @1市4村の関係のこれから A合併すると B新市建設計画とは…」の項目があった。「B新市建設計画とは」には次のように書かれていた。
新市建設計画とは1市4村の合併に伴う各地域の整備の基本方針を定め総合的なまちづくりの計画を策定したものです。(計画の期間は平成17年度から平成26年度の10年間) ↓ 松本市・四賀村新市建設計画・松本市西部新市建設計画](平成16年10月) ↓ 将来構想を骨子として各合併協議会が策定した計画 ↓ 新しく策定する松本市の総合計画に反映
同課では小冊子を渡しながら「四賀直結トンネルを含む新市建設計画はあくまでも計画ですよ」と言った。しかし、私も、まだ、腑に落ちない(良く理解が出来ない)。そこで私は小冊子をていねいに見ていった。そして、「そもそも松本・四賀新市建設計画とは、何ぞや」と思った。 私は再び松本市合併課に聞いた。「先日頂いた8ページの冊子『まちづくりの計画』に書かれている『新市建設計画とは1市4村の合併に伴う各地域の整備の基本方針を定め総合的なまちづくりの計画を策定したものです』という定義はどこから引用したものですか?」と。すると二冊の本のコピーを下さった。 「市町村合併特例法」(市町村自治研究会編集)と「市町村合併の特例のすべて」(松本英昭著)という本であった。その本を読んでいくと、どうやら「新市建設計画」の定義は合併特例法にあるらしい事が推測できた。私は早速、松本市島内図書館に合併に関する著書を取り寄せて頂くべく向かった。調査は中立でなければならない。学説にはさまざまな学説がある。もしかしたら松本市役所が私に下さった資料は偏っているかもしれない。資料に偏りがあってはならない。偏った考え方をしないために、島内図書館で「合併に関する本」を係の方に一緒にインターネットで探して頂いた。これはいつもの私のパターンなので係の方は「今度は合併ですか」と言いながら相談にのって下さった。翌日松本図書館から何冊かの本が届いた。横道にそれるが近くに図書館のある事が嬉しい。
★ 新市建設計画の定義 新市建設計画の語句は合併協定書にある。「協定とは」を広辞苑でみると「協定とは協議して決定すること」とある。合併協定書には「合併の方式、合併の期日、新市の名称、新市の事務所の位置、議員の定数、事務組織、地方税の取り扱い、使用料、国民保健事業、財産の取り扱い、……そして、24番目に『新市建設計画』…」がのっていた。合併協定書の『新市建設計画』には別添「松本市・四賀村新市建設計画」とあるだけである。 次に「松本市・四賀村新市建設計画 松本市・四賀村合併協議会」の冊子をみる。そこに冒頭の表中のような「……松本市街地と四賀地区とを直接結び、……」との文章が書かれている。新市建設計画については「市町村の合併の特例に関する法律(改正平成11年7月16日法律第87号)」(=合併特例法)第5条に「新市建設計画の作成」のタイトルで記され次の事が書かれていた。「…1.合併市町村の建設の基本方針 2.合併市町村または合併市町村を包括する都道府県が実施する……。 3.公共的施設の統合整備に関する事項 4.合併市町村の財政計画」と記されている」。 法律にも「計画」とある。松本市の小冊子「まちづくりの計画」文中の「新市建設計画とは」の定義は合併特例法から引用されていることが、はつきり、理解できた。 つまり下の表の文面は「合併特例法第5条⇒『新市建設計画の作成』⇒1.合併市町村の建設の基本方針の一つ」として書かれていることになる。だとすれば松本・四賀直結トンネルは「新市建設のための計画」と言うことになりはしないか。
「松本市・四賀村新市建設計画」 松本市・四賀村合併協議会26pW新市建設計画の基本方針 「…そのため、松本市街地と四賀地区とを直接結び、筑北地域や東信地域との連携の上でも重要な道路となる松本・四賀直結道路の建設に取り組みます。この直結道路は地区住民にも安全で安心できる生活を保障します。……』」 ★ おわりに――「四賀直結トンネルは合併条件か、いなか」 以上の考察から上記の文を説明するには、まず「これは新市建設のための計画」であるとし、その後に「計画のひとつとして『…松本・四賀直結道路の建設に取り組みます。…』と記されています」と説明するのが妥当ではないかと思う。 前述したが読売新聞(17.10.25)によれば松本市長は「『直結道路の建設は旧四賀村との合併の条件ではない』と重ねて強調した。……『後は旧四賀地区で村長が(村民に)どう説明したかだと思う』と話した。…」と述べているとの事。私も「K氏の言葉やMウイングでの四賀地区の方々の言動から」推測するに、松本市長さんの言われるように四賀住民は、きちんと説明を受けていないのではないかと思われた。もし、そうだとすれば旧四賀村の時は致し方ないにしても合併した現在、松本市は改めて、きちんと四賀区民に「新市建設計画について」説明しても良いのではないかと思うのは私だけであろうか。又、もし松本・四賀直結トンネルが「合併の条件」であるとすれば別の記述があってしかるべきではないかとも思う。なにはともあれ信頼される行政、政治のために正しい情報の提供は絶対条件ではないかと思う。なお、お気づきの点がございましたらご指導下さいますようお願いします。 筆者連絡先:筆者連絡先 〒390-0851 松本市島内6595 0263-47-2698 メール tatsue@beige.ocn.ne.jp ホームページ http://www.tatsue.jp/ 参考文献:市町村自治研究会編H15「市町村合併特例法」ぎょうせい/松本英昭H15「市町村合併の特例のすべて」ぎょうせい/中西啓之2000「改訂版 市町村合併」自治体研究社/加茂利男2001「市町村合併と地方自治の未来」自治体研究社/小西砂千夫2000「市町村合併のススメ」ぎょうせい/前田みゆき他2002「市町村合併と情報システム」日本経済新聞社/池上洋通2001「市町村合併これだけの疑問」自治体研究社/岡田知弘・京都自治体問題研究所編2003「市町村合併の幻想」自治体研究社
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