山崎たつえの視点 女性・福祉



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2005/11/30
児童虐待講演会に参加して
松本市南部公民館主催の児童虐待講演会があった。演題は「子どもの放棄(子育て困難)や児童虐待の背景」、講師は児玉典子長野県青少年家庭課長さんだった。私は修士論文で「DV夫から妻への暴力」の調査研究をしたので参加した。DVと児童虐待は表裏の関係である。以下、私の感じたままを記させて頂く。

★子どもの放棄でなく「子育て困難」とした理由
まず先生はタイトルの説明をされた。タイトルには「子どもの放棄(子育て困難)」と記されていた。先生は「父母の置かれている状況が困難なため児童虐待に至ってしまう場合も多いのでタイトルを『子育て困難』とした」と話された。私もその通りだと思った。
私が二人の乳児を抱えている頃「非行少年の更正のボランティアをしている」と言っていた女性が「子どもが悪くなるのは全部母親が悪い」とある会議で発言した。私も若く、反論する勇気がなかった為に「母親には母親の事情があるのよ」と心の中で訴えた。そして、「こんな人にボランティアと言って子どもの相手などしてもらいたくない」とも思った。彼女は独身を通していたので無理もないと思ったが、私は「母親が幸せにならずして、良い育児は出来ない。母親が幸せになるためには本人の努力のみならず、周りの環境などさまざまな要因が必要である」と常々思っていた。児玉先生は母親の気持が判る方だと思った。

★お母さんの叫び「私に休みを下さい」
先生のプリントの「親と子供の発した言葉」に「夫は仕事の休みがあるのに、私は一日も母親を休む事が出来ない。私に休みを下さい」との母親の言葉があった。私は一瞬「なんと非常識な母親!!」と思った。しかし、次の瞬間「まてよ!!」と思った。
この発想は「寝たきり老人は嫁が見るもの」という発想と同じではないか。かって、姑、舅は嫁がみて当たり前であった。しかし、今は「適度の休養を与えることがより良い介護に繋がる」とされ介護者が過労になるとショートスティに舅姑を預けることも出来る制度が出来た。これは「舅、姑は嫁が見るもの」とする意識改革から可能になった制度である。
そのように考えた時、育児も介護と同様ではないかと思う。育児の過労から母親を時には解放してあげる事が必要ではないか。もし、過度の過労から解放されたら、巷で起こっている児童虐待も少なくなるのではないだろうか。私は育児者のショートステイについて調べてみた。松本市に問い合わせると緊急一時的な短期の保育制度やファミリーサポート制度がある事が判った。前者の利用料は3歳まで8時間2600円、3歳以上1300円であり(但し12日限り)、後者は1時間600円との事。しかし、この制度を多くの市民は知っているだろうか。利用状況はどのようになっているのであろうか。先日「松本市の子育て支援について」、松本市の担当者からお話をお聞きした。私の子育ての頃には考えられなかったさまざまな政策がなされていた。子育て中の私の娘は「松本市の子育て政策は最先端を言っており、他の市町村に良き影響を与えている」と言った。それにしても昨年の母親の子どもへの虐待死の時、このような支援はどのように作動していたのであろうか。
「介護は嫁がするもの」「子どもは母親がみるもの」との意識が多くの犠牲を生み、その悲しみの積み重ねにより「児童虐待防止法や高齢者虐待防止法」が誕生したのだと思う。「妻の母親の嫁の」役割に伴う悲しみの結果の法律といえよう。

★虐待死亡の検証結果(厚生労働省の検証委員会による)を見て
先生持参の資料より虐待死亡事例の養育環境をみた時「1人親家庭・未婚50.0% 地域からの孤立54.2% 転居して間もない33.3%」となっていた。その通りだと思う。「1人親・地域からの孤立・転居して間もない」は孤独に通ずる。母親は孤立の中で自分の気持ちをぶつけるところがなく、子どもにぶつかって行く。私は前述の如く「夫から妻への暴力」の実態調査をしたが、分析の過程でハットしたことがいくつかある。その一つは暴力を受けた女性の多くが親に結婚を反対され結婚していたのである。妻は「夫に」暴力をされても親に反対されて結婚しているため何も親に相談できない。夫は「親に」妻がいえない事を承知して暴力続ける――こんな構図になっていた。その姿を見た時、親はどんな事情で結婚したにしても子どもの話に耳を傾ける状態にしていないといけないと私は思った。
もう一つ同調査から判った事は夫からの暴力を受けている女性は「たった一人わかってくれる人がいれば救われる」ということである。しかし、暴力から抜け出せない人はそのような人を持ち合わせていなかった。私は夫から妻への暴力のインタビューを何人かにさせて頂いたが、みんな、辛い体験であろうに喜んで話して下さった。そして、彼女らは言った――「判って頂けて、それだけで嬉しい」と。

★「親は愛情をもち殴って教育すべきだ」との発言
 これは今回の会議での発言である。良くこのような考えの人がいる。しかし、人は殴る時可愛くて殴るだろうか。私は怒りの感情で殴ると思う。又、殴られて嬉しい人がいるだろうか。私はいないと思う。
私は「夫から暴力を受けた妻」が「子どもに」暴力をした二つのケースの取材をしたことがある。1人は60歳の女性であった。理由もなく乳幼児の頃から親に殴られ続けた彼女は60歳になった今も「父母の墓前に線香をあげる事が出来ない」と涙ながらに語った。
もう一人は50歳になる男性であった。小さい時から「母親の首を絞める夢を度々みた」と話した。私は不注意に「まだ、男の子どもで良かった」と言った。その方は「男の子だったら良いのですか」と言った。私は男の子であろうと女の子であろうと殴られて嬉しい人はいないと思う。しかし、このような考えの人は多い。その点をどうするか…問題と思う。

★「今は児童虐待が多い。昔はこんな事がなかった」という話
「今は児童虐待が多い。昔はこんな事がなかった」という発言もあった。本当だろうか。私は、昔は「家庭の事は他人が口だしすべきではない」との考えの元に隠されていたのだと思う。夫から妻への暴力も長いこと隠されていた。ようやく表に出てきた。そして、法が裁いてくれるようになった。子どもについても同じだと思う。

★「児童虐待は虐待そのものに対応するより予防に力を入れた方が良い」との考え
先生は「青森県は予防に力を入れるため児童福祉士を3倍に増やした。その結果児童虐待での保護件数が減った。佐久市ではそれを実行に移している」と話された。
私も、その方法は良い方法だと思った。私に次のような体験があるからである。
私は子どもの養育に手を焼いた。あの手この手を使い試したが、どうも良い結果にならない。そして、到達した結論は「子どもが安心して暮らせる明るい家庭の構築が、手間がかかるようで、実は最も早い方法」であった。しかし、家族の居心地の良い家庭環境の整備は自分が努力しなければ出来ないことであり、並大抵ではなかった。私の子育ての課程は山崎たつえ著「母が語る子育て論」(明治図書出版・家庭教育シリーズ)「続母が語る子育て論」(明治図書出版・家庭教育シリーズ)に記してある。この本は明治図書出版からの依頼で出版した本であり、同社では「母親の立場で書いた全国で始めての本」と言っていた。同著は同出版社より全国販売された。17.11.30記

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