山崎たつえの視点 女性・福祉



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2005/02/17
高齢者になり多発している「妻から夫への暴力」
私の歩んだ道、そして、これから
これは400名程の会合で話させて頂いた時の原稿です。
 17.2.17

今日は「私の歩んだ道、そして、これから」という題でお話させて頂きます。まず、このような機会を与えて下さいました関係者の皆様に心から感謝致します。また私が老人大学に入学する事になったのは友人のお誘いからでしたが、その事も合わせて感謝致します。
1.「経済的自律なくして女性の自律はありえない」とする生き方
私が高校生の頃石垣綾子さんらがラジオや雑誌で「これからの女性の生き方について」語っていました。石垣さんらの話では「これからの女性は経済力をもたなければいけない。経済的自律なくして女性の自律はありえない。そして、そのためには『仕事も家庭も』の生き方が望ましい」――そんな話だったように思います。私はその生き方をしょうと子ども心に思いました。当時は男女の賃金格差があり、また、女性は結婚すれば退職しなければならない時代でした。しかし、その中で唯一官庁のみは男女平等でしたので、私は県職員となり管理栄養士として働きました。ところが結婚し、子どもができた途端、夫をはじめ、周りが「母親が働いていると子供が非行になる。家に入るように」と言いました。子どもが二人になった時、止む無く退職しました。
けれども「仕事も家庭も」の生き方、経済力を持ち自律した女性の生き方は追い続けました。子どもをつれて塾を始めました。子どもは私の教えている間、押入れで寝かせたり、遊ばせていました。時には生徒さんが、お子守をしてくれました。
しかし、私が仕事をする場合は必ず、条件がついていました。「家事育児に支障のない限り」
という条件です。これではきちんとした仕事が出来るはずがありません。そればかりか、それに違反すると私が仕事をする事は悪い事とされました。
私はどうして女性は仕事も家庭もの生き方が出来ないのか疑問を持ち「共働き家庭論」という本を書きました。夫の、又、世間の「女は家事育児に専念すべき」とする意識ではないかと、うすうす思いました。又、その頃、育児についての本「母が語る子育て論」も書きました。子どものことで悩みを抱えていたからです。当時子育ての本は教育者が書くものとされていました。当初自費出版でしたが明治図書出版から「全国販売したい」との申し出があり全国販売されました。この本は売れましたので印税も沢山頂きました。「母親の立場で書いた全国で始めての本」だと出版社はいっていました。
「なぜ物を書くか」と言いますと、問題の対応の仕方を模索するためです。子どもの扱い方で悩んでいる時、物を書いていきますと、子どもの扱い方をどうすれば良いかが見えてきます。当時の小学校の教頭先生が「書いている人が一番ためになっている」と言われましたが、その通りだと思います。そんなことにより子どもの悩みもなくなり、何とか、子どもたちもすくすくと育ってくれました。
2.高校の教師
三人の子どもが、社会人になった54歳の時、昔、役所で一緒に勤めていた方から「高校の教師として勤務しないか」との話がきましたので勤務させていただく事にしました。 しかし、私は短大卒のため高校の免許がありません。仮免許で教える事は出来ますが、大学卒の資格を取りたいと思いました。そして、放送大学に入学しました。
放送大学で一番大変だった科目は英語でした。短大を卒業してから35年間英語に関わっていません。中学一年のテキストから勉強をしました。そして、英検4級3級準2級と挑んでいきました。外国語の必須単位は4単位です。2年間の必須単位は62単位です。58単位を修得する時間と4単位を取る時間と同じ位の時間を要しました。
この時に役にたった方法は繰り返しの教育方法です。私の勤務させて頂いていた学校は学力的にかなり低い学力の学校でした。その子どもたちに如何にして教育をするか。先生方の様子を見ていますと「繰り返しの教育」をし、効果をあげていました。私もそれを真似して勉強しました。
横道にそれますが、生徒たちは繰り返しの教育により、知識を習得していきますと、それが自信になり、自信がつきますと生活態度が良くなっていきました。学校とは学習させることにより生活態度、生きる力をつけていくところであることを痛感しました。ですから学校では勉強をしなければいけない。そこが、家庭の役割と異なるところだと思います。
3.大学院へ入学
60歳になり定年退職しました。私は大学院で勉強したいと思いました。それは「今まで生きてきた中で、家庭においても社会においても職場においても男女差別がありました。「なぜ男女差別があるのか。また、女性はなぜ生きたい生き方が出来ないのか。その事を解明せずして人生の幕を閉じる事ができない」と思いました。その追求のために大学院へ行き、研究したいと思いました。大学院への受験のために受験勉強をしました。朝、4時位から起きました。又、人には会わないようにしました。時間との戦いだからです。女性問題は「社会学」の研究分野でなされています。女性の生き方は社会のあり方と大きな係わり合いがあるからです。大学の4年間に習得する社会学の内容を習得しなければなりません。自分に「来年の1月試験が終わったら一杯遊べるからね」と言い聞かせて勉強しました。
そして、無事61歳になった時、新潟大学大学院に入学しました。私の合格を聞き、いつもの飲み仲間は「大学院って、そんなに簡単に入れるんだね」と言いました。彼女らは私の飲んでいる姿しかみていません。一分の時間も惜しんで勉強はしていましたが、2週間に一度位は気分転換の為に彼女らと飲みあるいていました。
なにはともあれ、猛勉の結果、合格させて頂きました。
大学院での研究は夫から妻への暴力としました。世界的調査から、夫から妻への暴力は夫の妻への支配、男性の女性差別が原因とされています。私が入学した年にDV法ができましたが、当時、長野県での調査はなされていませんでした。2年間の研究結果は『おびえる妻たち』という題名で出版されました。先ほど申しましたようにDVは男女不平等のところに生じています。修士論文が書き終わった後、世界一の男女平等の国、スウェーデンに調査研究に行きました。その後書いた本が「スウェーデンへの旅」です。二冊で2300円ほどになりますが、安くしておきますので、お買い求め頂けましたら嬉しく思います。きっと皆様にとってお役に立つ事と思います。
どのような男性が妻に暴力をしているかをもう少し具体的に申しますと、「男は仕事をすべき、女は家庭を守るべき」とする男性、つまり、男が経済を握り、「女房は俺が食わせている」という意識の男性です。経済力という力で女性を支配しようとするところに夫から妻への暴力は起きています。今までの時代、経済力をもっているのは男性です。日本ばかりでなく、世界的に、経済力をもった男性が妻を殴るのは当然とした時代が長く続きました。女性の人権が叫ばれ、ようやく、夫から妻への暴力の問題が問題視されるようになりました。
4.男女平等政策は男性のために必要な時代
『おびえる妻たち』の研究は女性問題に視点をおいて研究してきました。しかし、この研究をしている段階で私は男女平等政策は男性のために必要な時代になったのではないかと考えました。男が経済力を握り、「女は男が食わせている」とする生き方は男性をも実は苦しめているのです。働き盛りの男性の自殺の急増、そして、高齢期に妻から夫への暴力が急増しています。前述の意識が原因しています。
・男性に多い自殺
近年男性の自殺が増加しています。そして、全体の自殺者の70%が働き盛りの男性です。なぜ男性は死を選択するのでしょうか。「女房は俺が食わせている」意識の強い男性は何らかの事情で妻子を食わせられなくなったとき「甲斐性なしの男」となり、生きている資格がないと自分で考えてしまうからです。今の時代、自分の責任でなく、社会のあり方の変化で失業することもあります。山一證券の倒産が良い例です。収入がなくなったとき男性は自殺まで自分を追い込んでしまいます。男女平等意識であれば、夫は「母ちゃん今度は俺が家事育児をするから働いてくれ」と言えばいいのです。どちらが働いてもいいのです。
・高齢者と男女平等政策
 ところで高齢期に「妻から夫への暴力が、なぜ急増しているのでしょうか。
男性が「金の力で妻を支配する生き方」が出来ない時がきます。定年の時です。定年になると男性は無収入になるか、今までは考えられない位、低い収入になります。
経済力がなくなった場合、夫と妻の力関係は変化します。高齢者にとっての力は生活力と若さです。妻の方が日常生活を送る上で生活力がありますし、年齢も妻の方が若いです。つまり妻の方が夫より力を持つ事になります。
人はされてきた方法を学習してしまいます。経済力という力だけで支配されてきた妻は「体力と生活力の力」で夫に対応することになります。妻が夫を支配することになります。暴力は支配と被支配の間に起きていますから、「妻から夫への暴力」となります。
塩尻市の「男女間にける暴力に関する市民調査」によると「女性では40歳代に被害が多いが、60歳以上になると『妻から夫への暴力』のポイントが俄然高く」なっています。夫が男性の腕力と経済力で妻を痛めつけてきたお返しではないかと思われます。
・夫へのしっぺ返しの日々
これは私の読者の事例です。60歳になるまでうつ病に悩んでいた女性から平成16年5月頃私の元に手紙が届きました。私の本を読み、「うつ病の原因は夫にある事が判った。夫による精神的暴力であると判った」との手紙でした。私は「話を聞かせてほしい」と電話しました。すると「まだ精神的にうつ症状があるので今はお話する事ができない」との事でした。しかし、10月になった時、メールが届きました。次のように書かれていました。
☆先生の著書「おびえる妻たち」の本を読み苦しみからぬけ出る事が出来ました。今は一生懸命(夫に)
☆お返しをしています、(今までの夫の妻への暴力を)如何にしても許すことが出来ないでいます。私の
☆体験が、お役に立てたらと思い決心しました。 曲は 私に合わせて (むなしく老いぬ)です。私で出き
☆る事が有りましたら――長野県○○市  氏名☆
彼女からのメールをあけますと大きな音で音楽が流れます。「むなしく老いぬ」の曲です。夫からの暴力で過ごしたむなしい日々だけで、むなしく老いるわけにはいかない、せめて残された老後をむなしくなく生きたいとの意気込みが伺えました。
この方は夫から受けた苦しみを夫にしっぺ返しをしているのです。「やってあればやられる」のが世の常です。「男の方が女より偉い」とする意識を家父長意識といいますが、若く経済力のある時、出産、育児などで経済的に太刀打ちできない妻を大切にしなかった夫、自分の経済力を笠にきて、妻の家事育児を評価しなかったり、妻の生き方に理解を示さなかった夫は高齢者になり妻からのしっぺ返しを受けるのではないか思われます。もし、夫が心と心のふれあいで、妻の人権を認めつつ、妻との日々を送ってきたなら、妻も夫に心と心で対応するでしょう。
60代以上の男性は「男は女房を食わせるべき」「女は男に従うべき」と教育されています。昔のように男性が定年とともにお迎えがあれば、生涯「男は偉い、女は従え」で、人生を終わる事が出来たでしょうに、……男性も長生きになりましため、女性にしっぺ返しをする時間を与える事となりました。前述したように「男は女より偉い」と育てられ、生きてきた男性は、男女平等時代を迎えて、どう生るかが大きな問題だと思います。先日、ある先生が「60歳以上になったら奥さんの悪口をいわないように」と言われましたが、「妻から夫への暴力」は60歳までの結果として起こっているのです。「今までの妻への償いをどうするのか」、それも大きな問題だと思います。
おわりに:私の提案
 女性が虐げられた時代から女性も人間として認められて生きる事が出来るようになりました。良い時代が来たと思います。しかし、支配したい男性にとっては、住み心地がよい時代とはいえません。何はともあれ、男性も女性も共に楽しく老後を過ごさなければなりません。私は先日班で「これからの高齢期を男女が、いかに生きるか」の学習グループの発足を提案しました。班では、それを決定下さいました。全ての行動の基礎は学習にあると思います。多くの皆様のご参加を祈念したします。以上で私の発表を終わらせて頂きます。ありがとうございました。
山崎たつえホームページhttp://www.tatsue.jp/
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販売中の自著: 『おびえる妻たち』1680円 『スウェーデンへの旅』590円


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